「最近、目がうつろでぼーっとしている」「急に攻撃的になった」「夜鳴きするようになった」
このような症状が見られるようになったら、老化のサイン。
もしかしたら犬の認知症が始まっているのかもしれません。
ここでは、犬の認知症について、認知症の症状や予防法についてご紹介いたします。
犬の認知症の原因とは?
人間もそうですが、犬の認知症の原因もはっきりとは判明していません。
人間の認知症と同じく、犬の認知症も、脳にβアミロイドの沈着が見られ、脳腫瘍や脳出血などに起因する認知症症状があるといったことや、人間と同じ神経原繊維変化を発見したという事例が報告されているとはいえ、まだまだ不明瞭な点が多々あります。
犬の認知症の症状について

人間の認知症の場合、中心となる症状、いわゆる中核症状に対して、それに付随する行動的・心理的な症状は、BPSD(Behavioral and Psychoogical Symptoms of Dementia)と呼ばれており、2つのカテゴリーに分けられます。
例えば、方向や道、時間の感覚が分からないといった中核症状に対する「BSPD」として不安や焦燥、徘徊といった症状が見られるといった具合です。
これに対して、犬の場合は、「DISHAAL」と呼ばれるカテゴリーに分けられています。
「DISHAAL」は、次のような症状の頭文字をとってこう呼ばれています。
- Disorientation(見当識障害)
- Interaction(社会的相互反応の変化)
- Sleep-Wake Cycles(睡眠覚醒の変化)
- Housetraining(家庭でのしつけの混乱)
- Activity level (活動性の変化)
- Anxiety(不安や恐怖の増加)
- Learning/memory(学習能力や記憶の低下)
それでは、「DISHAAL」の具体的な症状について見ていきましょう。
認知症の症状とカテゴリーについて
Disorientation(見当識障害)
・方向やドアの開く方向が分からない
・家具の隙間にはまって出られない
・床や壁をじっと見ている
・何かを見たり聞いたりしても反応しない、もしくは反応が鈍い
Interaction(社会的相互反応の変化)
・飼い主や同居している動物に対して反応が鈍いまたは、攻撃的になった
・飼い主に過度に依存したがる
・飼い主に常に接触したがる
Sleep–Wake Cycles(睡眠覚醒の変化)
・昼夜が逆転している
・夜鳴きをするようになった
Housetraining(家庭でのしつけの混乱)
・トイレの粗相が増えた
・寝場所や家を汚すようになった
Activity level(活動性の変化)
・徘徊するようになった
・食欲が急に増加した
・同じことを繰り返すようになった
・食べ物に関心がなくなった
・遊びが減少もしくは、活動量が減少した
Anxiety(不安や恐怖の増加)
・飼い主がいないと落ち着かない様子を見せる
・新しい場所や物、人を怖がるようになった
Learning/memory(学習能力や記憶の低下)
・コマンドに対する反応が鈍口なった
・新しいことが覚えられない
これらの「DISHAAL」は、認知症のチェックリストにもなっています。
該当する症状が多ければ多いほど、認知症の可能性が高いといえるとともに重度の認知症であるとも言えます。
犬の認知症のリスク因子について
犬の認知症の最大のリスク因子は、加齢です。
そのほか犬種や性別、避妊去勢の有無などといったことが関係するという話も耳にすることもありますが、様々な研究がなされるなかで、これらに関してははっきりとした関係性があるとは言えないようです。
病気と認知症の関係性から言えば、特発性てんかんを持っている犬の場合は、早期に認知症を発症するリスクがあるということです。
また、低血糖が脳機能に障害を与えることにより認知症のリスクが高まるとも考えられているようです。
認知症を発症した犬への対策について
愛犬が認知症になったら、どのような対策が必要なのでしょうか?
「生活環境」「運動」「食事」
この3つについてそれぞれ見ていきましょう。
生活環境
・認知症を発症した犬は、家具の狭い隙間などに挟まって出られなくなることがあります。
家具と家具の隙間ができないよう気をつけましょう。
・認知症が進むと転倒することもあります。
家具や柱の角など、転んでケガをしそうな場所には、保護材をつけるなどといった配慮が必要です。
・徘徊のリスクに備えるため、階段の入り口・下り口、ベランダ、玄関などにはゲートを設置するなどといった対策が必要です。
徘徊が始まり、飼い主さんの目が届かない場合には、エンドレスサークルを利用しましょう。ハーネスにつけたリードを少し高い位置で固定し、ぐるぐると回れるようにするなどする良いでしょう。
徘徊に関しては、通常右回りで徘徊している犬が逆回りを始めたら、発作を起こす前兆である場合がありますので、気をつけましょう。
・夜鳴きをするわんちゃんは、昼間になるべく睡眠を取らせないことがポイントです。
・認知症により朝晩が逆転することがあります。
午前中の日光浴で、体内時計をリセットすることも大切です。
・トイレの場所を増やす、トイレに頻繁に誘うなどの配慮も必要です。
・認知症は、秋から冬、気温が下がってくると表れやすいとされています。
寒くなる季節には、体を冷やさないよう保温に努めてあげましょう。
運動
散歩や軽い運動は、脳内のコリン濃度を安定さえ、細胞を保護する効果があるとされています。
脳の活性化を図りつつ、筋力の維持のためにも適度が運動は必要です。
また認知症には、声掛けや触れ合いも大切です。
飼い主さんがマッサージをしてあげることで、血行を促すとともに血流改善に努めることができ、脳の活性化につながります。
また触れ合うことで、オキシトシン(幸せホルモン)の分泌を促します。
これにより、不安を軽減させる効果が期待できます。
食事
老犬の食事のポイントは、酸化ストレス予防です。
酸化ストレスとは、活性酸素が多くなりすぎて細胞修復や再生がうまくいかない状態のことを言います。
酸化ストレス予防には、ビタミンE・C、カロテノイドなどといった抗酸化作用のある食品を取り入れることがポイントです。
また脳の機能低下を抑制し、神経疾患の予防や改善が期待されるn-3系脂肪酸が含まれた食品を取り入れることも大切です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)が豊富に含まれる青魚、魚油、α-リノレン酸を多く含む亜麻仁油やエゴマ油もおすすめです。
食事で摂りきれない栄養分は、サプリメントで摂取するのも良いでしょう。
神経細胞の活性化や脳の血流改善といった、認知症の予防や改善に良いとされるDHAやEPA、イチョウなどのサプリメントを取り入れるのもおすすめです。
認知症の予防について
認知症の予防に有効なのは、上記に挙げたものと重複するところもあります。
- 適度な運動
- コミュニケーション
- 栄養バランスの良い食事
- 日光浴
- 脳を刺激するようなゲームや知育玩具の使用
このように、犬の認知症予防については、人間の認知症予防と通ずるものがあります。
愛犬が認知症にならないためにも、日頃から飼い主さんが心がけてあげていると良いですね。
まとめ
犬が認知症を発症すると、飼い主さんもお世話が大変になります。
現時点では、犬の認知症に効くお薬はありません。
そのため人間用の抗不安薬や鎮静剤、睡眠薬などを使用するケースもあります。
認知症を予防するには、飼い主さんが日頃から愛犬の様子を気遣い、よく声をかけコミュニケーションをとること、そして適度な運動とバランスの取れた食事など、愛犬を気にかける飼い主さんの愛情が大切です。
この記事の監修者
獣医師 出家 淳
離山動物病院 院長
川西市周辺地域の動物病院として予防・治療にあたるだけではなく、ミネルバ動物病院と連携をとりながら高度医療が必要な患者様への医療提供も実施していきたいと思います。
動物のため、飼い主様のために何がベストなのかを常に考えながら予防や治療にあたって参ります。